社会福祉法人しらゆり会 さくらづか保育園

山がくれた遊具

子どもの遊びの代表格だった木登り。今では、町中にも園庭にも登れる木は少ない。それは、木を伐ることは大好きだが、植えることをしない私たち大人の仕業だ。木登りは、体全体を鍛えると同時に、危険を察知し最良を選択する力を育む。何よりも楽しい。生きた木の方が良いのだが、それが叶わないなら、園舎に枝付丸太を建てようと提案したのが始まりだった。たくさんの枝が突き出した檜を前に、保育者、施工者、設計者が一堂に会し、子どもたちにも試してもらい、立て位置はどこか、どの枝を残すのか、登り、ぶら下がって体で試し、安全と冒険の狭間で悩み、決めた。それは、リスクとハザードの仕分け作業だ。既製品の遊具と違って均質な部分は
皆無だから、100点満点はあり得ない。しかし、90点が許されるわけではない。その矛盾に満ちた判断こそ、我々大人が子どもたちのためにせねばならないことのひとつだと思う。元来、遊具と自然物の境界線はなかったはずだが、いつのころからか、自然物から独立してしまった。既製品が優れている部分もあるが、純粋におもしろいかどうかという観点でみると、既製品が良いとは一概に言えないのではないか。一定の角度で滑り落ちる滑り台より、斜面の段ボールすべりの方がスリルがあるし、等間隔でバーが繰り返すジャングルジムより、木登りの方が変化に富む。遊具は遊ぶためにあるのだから、おもしろさで選ぶのが自然だろう。それ以外の理由で遊具が選ばれているとすると、園庭に並ぶ既製品の遊具群が異様に映る。均質化する遊具、それとともに単純化する遊び。育ちを任せられ、責任を負わされる現場が、理想と現実の狭間で苦悶しているであろうことは想像に難くない。遊具を既製品から選ばせているのは誰なのか、私たちは自分自身を疑ってみる必要があろう。皮を剥いただけの木々に、鈴なりにしがみつく子どもたちを見ながら、子を持つ一人の大人として思った。

『近代建築』2018年9月号第72巻9号(特集:保育建築の計画と設計) 掲載
『建築とまちづくり』2019年1月号(No.481)掲載
日本木材青壮年団体連合会主催 第22回木材活用コンクール 木質開拓賞 受賞


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ちびっこ計画・大塚謙太郎一級建築士事務所
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